テニスボールはラケットを使って打ちます。けれどもボールと直接触れるのは、ラケットに張られている「ストリング(糸)」です。そのためストリングの知識を深めることは、テニスの上達にも影響するとても大切なことなのです。

 知っているようで、あまり知られていないストリングのこと。そこでストリングやラケットに関する素朴な疑問をプロのストリンガー(ストリングを張る人)に答えてもらいました。

 今回のテーマは「細いストリング」と「太いストリング」のハイブリッドについてです。メイン(経糸)とクロス(横糸)で太さの異なるストリングを張ると、果たしてどんな特性が現れるのでしょうか。ストリンガーに聞いてみました。

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 まずは、ストリングの太さによる影響を説明します。1.20ミリなど1.25ミリ以下の細いストリングは、打球時の面のたわみが大きくなるため、スイングスピードが速くないプレーヤーでも、楽にボールを飛ばせます。また、ストリングの引っかかりが強くなるため、スピンもかかりやすくなります。

 ただ、アシスト性能が高い細いストリングは切れやすいというデメリットもあります。物理的な細さもありますが、スライドバックでの稼動域が広いためストリングの消耗が大きく切れるスピードが速くなるのです。

 1.30ミリなど1.25ミリ以上の太いストリングは、面がたわみにくくなるのでボールを強打するプレーヤーに向いています。また、耐久面でも太いほど、切れにくくなるので、ストリングが切れやすくなった場合は、太さを1段階上げることで長持ちするでしょう。

 デメリットは、ボールの飛び・スピン性能が落ちることや打球感が鈍くなることです。ボールとストリングが接地している面積が多いため、打球感が鈍くなるのです。
  ハイブリッドでは、このような太さによる特徴を考慮して、自分が何を求めているかによって、メインとクロスの組み合わせを考えます。

 耐久力を上げたい場合には、メインのみ太さを1段階上げます。スピン性能は若干落ちますが、クロスの耐久力が上がり切れにくく、クロスのアシストが加わり楽に飛ばすことができます。

 ボールコントロールを上げたい場合には、クロスを1段階太くしましょう。クロスを太くすることで面の暴れを抑えられコントロールしやすくなります。

 なお、ナイロンとポリのように違う素材のハイブリッドで太さを変える場合は、違う結果になる場合がありますので、ストリンガーに相談してください。

解説:鈴木貴也(テニスサポートセンター)
※2021年東京五輪のストリンギングチーム

取材協力●テニスサポートセンター

構成●スマッシュ編集部
※2023年8月号より抜粋・再編集

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